2022/04/15
企業の中には、WebサイトのSEO対策を外部の会社に依頼する企業と、内部の人材でWebサイトのSEO対策を進める企業があります。前者を「アウトソースSEO」と言うのに対し、後者を「インハウスSEO対策」と呼びます。持続的なSEO対策を目指す企業にとって注目されている手法です。
これまで、SEO対策はその専門性の高さから、SEO対策の会社に委託するパターンが多かったです。ところが、近年Googleによって、どのような記事が上位表示されるのかというSEOの本質に関わる情報が公開されるようになりました。これにより、一般企業でもある程度SEO対策の仕方が見えてきたため、最近はインハウスSEOのニーズが増えているのです。
本記事ではこのニーズの高まりを踏まえて、インハウスSEOの基礎事項やインハウス化の方法を詳しく紹介します。
目次
まずは、SEOについて基礎の部分を解説します。
インハウスSEOとは、SEOを外部の企業に委託せず、社内の人材でSEO対策することです。インハウスには「内製化」という意味があり、企業内弁護士のことを「インハウスロイヤー」と呼ぶのと同じです。また、SEOとは、「検索エンジン最適化」の略で、自社のWebサイトを検索上位に表示させるための一連の施策のことです。
社内ですべき施策は多岐にわたりますが、まとめると「ユーザーのニーズを満たす情報を提供する」「Googleの検索エンジンが評価しやすいサイト構造にする」の2つに集約されます。
近年インハウス化が求められるようになった背景には、次の2つがあります。
1つ目は、民間企業において自社サイトの持つ価値が高くなっているためです。2010年代に入り、一般人にスマホが普及したことで、マーケティングの媒体が紙やテレビCMから、SNSやWebサイトへ変化しました。そのため、BtoCの企業では特に、Webサイトを活用して集客する必要が出てきており、現在では企業マーケティングにおいても業務に占める割合は高くなっています。SEO対策ももちろん必須なわけですが、もしSEO対策を外部に委託したままにすると、外部との関係が何らかの原因で解消された際、自走することができません。そのようなリスクを鑑み、企業の多くがSEO対策のインハウス化に注力しているのです。
2つ目は、GoogleによりSEOの評価基準が公開されたことです。10年前まではどういう基準でWebサイトの検索順位が決定されているか正確な情報がなく、様々な検索結果から傾向を推測するという高度な作業が必要でした。ところが最近、Googleがブログやツイッター、ガイドラインによって基準となる情報を積極的に公開するようになったため、SEO対策の正しいあり方が見えてきました。そうするとかつてのように高度な分析が必要なくなり、一般企業のハードルも下がったため、近年のインハウスSEOブームにつながったのです。
では、SEO対策をインハウス化することには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。メリットは大きく3つあります。
インハウスSEOのメリット1つ目は、外部業者への支払コストが削減できるという点です。SEO対策を行う企業の多くはコンサルのような業務形態を取るため、依頼料として少なくない費用を払うことになります。ところがインハウス化してしまえば、従業員への給料や教育費は払う必要があるものの、トータルしてコストカットにつながります。そのため、金銭面で考えるとインハウスSEOはメリットがあると言えます。
インハウスSEOのメリット2つ目は、自社のマーケティング人材育成を同時並行できる点です。先ほどお伝えしたように、最近ではマーケティングのうちかなりの割合をWebマーケティングが占めるようになりました。今後も業務の割合は拡大し続けるはずです。これを考えると、インハウス化により社内でSEO対策を回せるようになれば、その部署は実質その会社のマーケティング部門と同義となり、その部署から育つ人材はマーケティング人材となります。このように今後のマーケティングのあり方を考えると、SEO対策をインハウス化することで自ずとマーケティング人材が育つのはメリットだと言えます。
インハウスSEOのメリット3つ目は、メーケティングのノウハウが蓄積されるという点です。企業にはそれぞれターゲットとなる顧客がいて、顧客のニーズを把握すること、顧客ニーズに刺さる訴求の仕方を考えることがマーケティングにおいて重要なことでした。マーケティングの中でSEO対策の重要性が高まっている現在、敢えて社内でSEO対策をすることで、他企業に先んじて次世代のメーケティングスキルを蓄積できることがメリットだと考えられます。
一方でインハウスSEOにはデメリットもあります。ここでは大きく3つ紹介します。
インハウスSEOのデメリット1つ目は、成果の出にくさです。SEOの性質上、施策の結果が出るまでに1年を要する場合もあります。それに加え社内のSEO部隊を1から作るとなると、成功確率は決して100%とは言えません。また、仮に成功したとしても、成功まで1年では済まないと言うことを覚悟しておく必要があります。長期的・戦略的な考え方が必要です。
インハウスSEOのデメリット2つ目は、人材確保が難しい点です。今の従業員は現状何らかのタスクを背負っている状態だと思います。それに加えてSEO対策までするとなると、労働力の確保に工夫が必要であることは明確でしょう。また、SEO対策のために従業員を確保しても、その従業員が退職してしまうことも考えられます。SEO部隊に入ったことを配属リスクと考えて辞めるケースもありますし、それ以外が原因かもしれません。どちらにしろ、従業員が辞めてしまうと、SEOのノウハウの蓄積・運用に支障を来してしまうため、人材確保の難しさはデメリットの1つでしょう。
インハウスSEOのデメリット3つ目は、社内でSEO対策を行うべきというコンセンサスが取れない可能性があるという点です。特に大企業だと、マーケティング部門以外にも様々な部署が存在しているでしょう。また、社内には最新の社会動向に無関心な中高年の重役の方もたくさんいらっしゃるでしょう。そのような社内政治を乗り越えて社内にSEO部隊を作るべきだという主張を通すのは、かなり難しいと思います。SEO対策の必要性を資料でわかりやすく伝えるなど手間・工夫が必要です。
SEOのインハウス化には、実は向いている企業と向いていない企業があります。ここでは、それぞれの特徴をお伝えします。
まずは向いている業種・企業の特徴をお伝えします。
業種でいくと、.商材単価が高い業種、社会人がメイン顧客となる業種が向いていると言えます。例えば住宅関連や教育関連の会社です。これらの事業は、検索数が多い上に、契約1件当たりの収入が大きいため、インハウスであっても十分費用対効果が見込めるでしょう。
また企業の特徴でいくと、経営者がマーケティングの重要性を理解している企業、ITツールの活用が進んでいる企業は向いていると言えます。また、SEO対策はやはり専門的な知識・経験が求められるため、SEO経験者を雇用して専任者にすることは必要不可欠です。外部のSEO会社に頼らずにインハウスでやっていくためには、現場から経営まで会社全体でSEO対策の必要性を理解できる度量があるか、そこが重要でしょう。
インハウスSEOが向いていない業種は基本的にありませんが、向いていない企業の特徴は存在します。向いている企業の特徴の裏返しにはなってしますが、経営者がSEO対策に理解を示さない場合、ITリテラシーが社内全体で低い場合は、SEOのインハウス化が難しいでしょう。しかし、これは現段階で難しいと言っているに過ぎません。時間をかけてIT技術を社内に浸透させ、SEO対策もIT化の流れで必要だと気づかせることで、インハウスSEOに必要な社内の度量を養う事は十分可能です。
企業内部でSEO対策をするとしても、やはり最初は専門家に頼るべき部分もあります。そこで、いかに外部のSEO会社と関わっていくのか、時期別に解説します。
SEOをインハウス化しようと思ったら、最初は外部のSEO会社に依頼をして、数ヶ月の間SEO対策をしてもらいましょう。この際のポイントは、SEO会社の方と積極的に交流して、SEOに関する専門知識を素早く吸収することです。外部のSEO会社を師匠として捉え、その対策手法を見ながら、将来的に内部だけでSEO対策するならどうするべきか想定する期間がまずは必要です。
ある程度SEO対策について理解できたら、次は社内でSEO対策をマネしてみる時期に入ります。獲得した人材をSEO対策の各役割に配置し、実際に社内で回してみるのです。そうすると、外部のSEO会社を見ていたときはわかっていたのに、実際にしてみるとわからない、といった壁にぶつかると思います。このフェーズでは、連携した外部のSEO会社に疑問点を投げかけるようにしましょう。こうしているうちに、だんだん内部だけで自走できるようになります。
内部の人材だけで自走できるようになったら、最後に外部のSEO会社とのお別れが待っています。外部のSEO会社もあなたたちクライアントがいてビジネスが成り立つため、場合によっては契約の継続を持ちかけられることがあると思います。その際は、関係を切るのもいいですが、コンサルタント会社との関わりを継続して、定期的にアドバイスを受けることも可能です。SEO対策はインハウス化してからも小さな施策の積み重ねが大事になってくるので、不安なところだけすぐに聞ける存在として関係を継続することも検討してみてください。
インハウスSEOについて様々な事項を確認してきました。最後は、インハウス化するとして、具体的にどのように業務が待っているのかについて説明しようと思います。
まずはどのようにマーケティングするか、戦略を立てる業務です。想定できる業務は以下の通りです。
この中でメインの業務はターゲット設定と対策キーワードの選定です。それぞれ誰に情報を届けるか、どのような情報を届けるか、に該当し、マーケティングの骨格を担う重要なフローになります。残りの3つは先ほどの2つを適切に行うために必要なリサーチに該当します。リサーチがあって初めて正しい判断ができるため、手を抜かずに行いましょう。
2つ目はユーザーに直接見てもらう、コンテンツの部分です。業務としては以下のようなものがあります。
まずコンテンツを書くライターが必要です。「社内で人材を雇うのでは?」と疑問に思われる方もいるでしょう。確かに、社内の人材に書いてもらうのも手段の1つです。しかしライティング業務もかなり専門的なスキルであり簡単には習得できない点、ライターに関しては外部に委託した方が安いケースも多い点を考えると、外部のフリーランスの方に募集をかけ、その中から優秀なライターを選定し書いてもらう方が得策でしょう。
また、記事を書く上でタイトルやメタディスクリプションは特にSEO評価に直結するため、外部ライターに委託する場合でもタイトルやメタディスクリプションは自社で作るようにするなど、質を担保する工夫が必要です。
ライターから上がってきた記事のチェックをするのも大切な仕事です。他社の記事と内容が酷似していないか、誤字脱字がないか、意味が伝わる文章か、など、読み手の立場で客観的に検収することが大切です。
3つ目はサイト全体の設計です。主に以下の業務があります。
内部リンクはとても大事です。自社サイトに流入してきたユーザーは、他にもいくつか記事を読んだ上でコンバージョンに至るケースが多いです。そのため、ある記事を読んでもらったら次はどの記事を読んでもらいたいか、どの記事順で読ませたら顧客化できるかなど、戦略的に導線を張ることが重要なのです。
加えて被リンク数も大事です。被リンクとは外部リンクとも呼び、他の企業から自社の記事をフォローしてもらうようなイメージです。メディアの力が強い大企業からフォローしてもらえると、自社のメディアも良質だと判断してもらえる場合があります。逆に質の低いサイトからフォローされてしまうと、自社サイトの価値も低く見られてしまうため、質の高いサイトかどうか確認しながら被リンクを呼び込む必要があります。
最後は、ある程度の期間が経ってからマーケティングの成果をチェックして、場合によっては修正する業務です。以下のようなものがあります。
以下の記事でも詳しく書いているため、もう少し詳しい内容が知りたい、使うツールを知りたい、という方はご覧ください。
ここまでご覧いただいた方の中には、インハウスSEO対策をしたいと思われた方も多いでしょう。
確かにインハウス化までの道のりでは大変なことも多いでしょう。しかしインハウス化できると、現代のマーケティングに乗り遅れることがなくなり、他にも様々なメリットが得られるのです。
大切なことは、インハウス化するところと外注するところの区別をつけることです。ライターのように外に任せても問題ない部分は色々あります。このように区別をつけることで、Webマーケティングを自社でコントロールできるようになるのです。